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RO創作『シーフとマジシャンの邂逅』

『Wine to Ragnarok - 葡萄酒と黄昏 -』のろれさんのRO創作SSに刺激を受け、自分でも書いてみたいなーと思い立つ。
 なかなか思い付かないなりにネタを考え出し、軽く構想して執筆。
 どうにか形に出来たので、試しにアップしてみた。

 内容は、シーフとマジシャンのチュートリアルクエスト。
 自分はグレイデューでかなり苦労してクリアした記憶があり、しばらくモロクが苦手だったくらいだ。

 なお、「1次職クエストの時点にしてはこいつら強過ぎねえ?」と思うかも知れないが、そこは話の都合としておいて頂きたい。



「争った跡?」
「ああ、この間、街の南側で派手に争った奴らがいたらしくてな」
 新米シーフ担当官・イルヒは、鷹揚に頷きながら問い掛けに応えた。

 問い掛けた声の主は、イルヒの目の前に立ち、砂風にショートの金髪をなびかせた、軽装の少女。

 ここは、砂漠の街・モロクの外れに位置する、『ピラミッド』の入り口前。
 その少女は、ピラミッドの地下に潜む『シーフギルド』に加入したばかりの新米シーフだ。
 イルヒがその少女の教導を受け持ったのはついこの間の事だが、その進捗は極めて速かった。
 瞬く間に技術を習得したその少女は、既にシーフとしての基本的な実力を己のものとしている。

「そんな訳でだ。お前に調査を頼みたいって訳だ」
「へえー。じゃあ、詳しい話を聞かせてよ。私に頼むまで、何も調べなかった訳じゃないんでしょ」
 情報を求める少女に、イルヒは満足気にニヤリと笑う。
「良い姿勢だ。情報収集を抜かり無くこなしてこそシーフってもんだ。
 勿論、今の所分かっている事は教えてやるが……ちょっと待ってくれ」
「何? さっさと教えてよ」
 不満げな表情を浮かべる少女を見やるイルヒは、ふとその目を遠くへと向ける。

「……お、来たな。何度も説明するのが面倒くさいんだよ」
 イルヒの視線を追って振り返る少女。
 その先にいたのは、ゆったりとしたローブを纏い、杖を携えてこちらに歩いてくる青髪の少年であった。

「失礼します。貴方が、イルヒさんですか? ゲフェンのマジシャンギルドから参りました」
「おう、わざわざすまないな。手伝いに来てくれて」
 少女は、イルヒと少年に交互に目を向け、そしてイルヒに視線を戻す。
「手伝い?」
「ああ。こいつと一緒に調査をして貰う。ほら、挨拶しておけ」

「……ええっと。シーフの、タイニーファング。宜しく」
「初めまして。マジシャンの、グレイデューと申します」

 シーフの少女・タイニーファングは、マジシャンの少年・グレイデューと、軽い自己紹介を交わした。

 数刻後。

「あっ、見て下さい、タイニーファング。あれもそうじゃありませんか?」
「どれどれ? ……あ、待ってグレイデュー。それ多分、触ると拙い奴よ」
 タイニーファングは、地面を凝視するグレイデューに制止の声を掛ける。
 そして、地面に魔力を持った赤い宝石を置くと、解毒作用のある緑色の粉末を振り掛け、作業を行った。
「これで良し。何かあるかしら……?」

 イルヒによる事前説明はこのようなものだった。

 争った跡はモロクの南から、ソグラト砂漠に点々と存在しており、長い距離を移動している事が伺える。
 場所によっては毒が使用された痕跡があり、暗殺と毒の仕様に長けたアサシンの関与が確実視される。

 以上の事前情報を基に、2人は争った跡を辿りながらソグラト砂漠を練り歩いていた。
 そして今も、地面に仕掛けられた毒のトラップを解除し、調査を続けているという訳だ。

「何かありました? 何です? それ」
「布きれ、ね。何か書いてあるけど……。ねえ、さっきも同じようなものがあったわよね」
「前の場所で拾った、これの事ですね。……確かに、よく似ています」
 調査の進行は良好と言えた。
 何者かが逃亡し、それを複数の何者かが追跡し、毒を撒き、罠を仕掛け、ときに交戦しながら、移動している。
 手掛かりを拾い集め、曖昧ではあるものの当時の状況が組み上がって行く。

「では、次の場所に行きましょうか」
「そうね。この辺りも大体調べて……」
 移動の為に立ち上がり、グレイデューに向き直ったタイニーファング。

 その表情が、凍る。

「……? タイニーファング、どうしました?」
 タイニーファングの様子を伺おうとしたグレイデューは、そのとき、不吉な羽音を耳にした。

「危ない!」
 タイニーファングは俊敏な動きでグレイデューに飛び掛かり、その身体を押し退けた。
「うわっ!」
 為す術もなく砂の上を転がるグレイデュー。
 訳の分からぬまま身を起こし、事態を把握しようとタイニーファングの方を見る。

「……!」
 そこにいたのは、短剣を構えたタイニーファング。そして、その視線の先に。

 鮮血を思わせる真っ赤な身体の、巨大なハエの姿をしたモンスターがいた。

「は……ハンターフライ……!」
 グレイデューは即座に自分の知識を呼び起こし、反芻する。
 砂漠や廃墟に生息し、動物の生き血を好む獰猛で恐ろしい昆虫の化け物。

 そして、一番重要なのは……。今の自分達が敵う相手ではないという事だ!

「くっ……!」
 振り下ろされるハンターフライの鉤爪を短剣で払い、タイニーファングは致命傷を避けた。
 しかしその動きは隙を生み、高速で繰り出される次の鉤爪への対応を遅らせてしまう。
「っくぁあっ……!」
 流れる血。苦痛の悲鳴。
 次の一撃によりタイニーファングが哀れな犠牲者となってしまうまで、あと数秒も残されてはいない。

「ファイアーウォール!」
 突如、タイニーファングの視界が赤橙色に染まる。
「ひゃっ!?」
 タイニーファングは、前面からの急な突風を浴び、思わず後ずさった。
 倒れそうになる身体が、何かにぶつかって止まる。
「グレイデュー……!」
「大丈夫ですか!? 走れますか、タイニーファング!」
「う、うん……」
 グレイデューによる後ろからの支えから身を離し、確かに地面を踏み締める。
 負傷により激痛が走るが、身体は問題無く動かせる。

 目の前には、グレイデューが魔法で作りだした炎の壁があった。
 その向こうから、分厚い布を叩く様な、鈍い打撃音が断続的に響く。

「離れましょう。ファイアーウォールが阻んでいますが、すぐに破られてしまいます!」
「うん……!」

 2人は真っ直ぐに駆け出し、その残忍な赤い狩人から離れ、難を逃れたのであった。

 翌日。

「何とか終わったわね。一時はどうなるかと思ったけど」
「本当に……赤ポーションも余分に持っていて良かった」

 タイニーファングとグレイデューは、シーフギルドからの調査依頼を終わらせ、モロクの街を歩いていた。

 途中、恐ろしいハンターフライに襲われるというピンチに見舞われたが、何とか犠牲にならずに逃げ出せた。
 その際に負傷したタイニーファングを治療した後、慎重に慎重を重ねて調査を続行。
 可能な限りの追跡調査を終え、イルヒへの報告を果たしたのであった。

「それにしても……きな臭い事件だったみたいですね」
「まあね。あの布きれに書いてあったのも、アサシンの符牒だったって言うし」
 2人の調査では、その場その場で起こった事を個別に推測する事は出来た。
 だが、結局事件の内容や背景自体は何も分からないままだ。
 それはきっと、ギルドの上位者達が関わる事で、自分達の仕事ではないのだろう。

 取り敢えず仕事は終わり、2人はそれぞれの活動に戻る事になる。

「……有難うね。グレイデュー」
「え?」
「あのとき、魔法で助けてくれて。バタバタしてたから、言うのが今頃になっちゃったけど」
「ああ……」
 グレイデューはタイニーファングの言葉を理解し、少し照れくさそうな仕草をした。
「それを言うなら。あのときタイニーファングが助けてくれなかったら、私は一撃で倒れてたでしょう。
 助けてくれて、有難うございます」

「ふふっ……私達、一緒に冒険していて良かったわね」
「ええ、本当に……」

 2人は顔を合わせて微笑みを交わす。そして、街の北門へと差し掛かった。

「それじゃあ」
「ええ」

 街を発つグレイデューに、軽く手を振って見送るタイニーファング。
 2人の間に、特に大仰な別れの言葉は無かった。
 
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ファ流シ音

Author:ファ流シ音
 2006年4月、Chaos(現Vali)にて開始。
 それから3年間くらいは転生目指して必死にログインしていた記憶があるが、それから先は現役とも休止とも言えない中途半端な時期を過ごす。
 現在は何やかやでログインが増えて来たので、ブログを書き始めてみた。

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